電子化が進んでいる現代社会は、ペーパーレス社会と呼ばれることがあります。読みたい本を本屋さんで買うのではなく、電子的な形で購入して電子書籍リーダーでそれを読む人が増えてきました。同様に、スマートフォンやタブレット端末の普及により、重たい辞書や百科事典をカバンに入れて持ち歩かなくてもよくなりました。子どもたちの学習教材にもそのような電子機器が使われるケースが増えてきました。
このようにして紙の使用を控えるならば、森林伐採などの環境問題に良い影響を及ぼすと考えられています。しかし、社会のこのようなペーパーレス化は、ある業界の企業には大きなダメージを与えています。それは製紙業や印刷業や出版業などの企業です。とはいえ、それらの企業もこうした事態をただ静観しているわけではありません。
例えば、環境に優しいケナフ素材の用紙を使用するなどして、印刷業界のイメージアップを図っています。また、ペーパーレス化が進んでいるとはいえ、社会は印刷物を依然として必要としています。電子書籍が普及してきた今でもなお、実物の書籍を手元に置いておきたいと望む人は少なくありません。また、金融の世界では、株券などが電子化されペーパーレスとなりましたが、株主は様々な送付物をその会社から受け取ります。
電子取引により保険証券が不発行とされている人にも、保険引受のお知らせや更新の案内が郵送されます。クレジットカードの利用明細を電子的な方法で受け取っている人も、そのカード会社からは様々な広告がダイレクトメールで送られてきます。それらはすべて印刷物の形で人々の手に届けられます。ペーパーレス社会がいっそう進むとしても、印刷の需要がなくなることはないでしょう。